・LOVER—いつもあなたの腕の中—

 けれど。ここ最近忙しくてドラマは録画したまま放置気味だし、雑誌もサーッと流し読みした位で。我ながら情報の乏しさを実感し、脱力する。

 だめだ。私、この人に関して何も知らないじゃん。顔と名前くらいしか知らないとか、やっぱり失礼だよね……。

 こりゃ、気づいていたのに気づかないふりをしていたと勘違いされているのが申し訳ないくらいだ。気づく気づかない以前に興味が無くて知ろうともしていなかったなんて、本人を前に言えるわけがないし。そこまでファンではないのに「ファンです」とか言うのも変だし。
 どうしよう、こういう時はどう言えばいいんだろう。

 そんなことを考えていた私に「機種変出来たってさ」と西田リュウに声をかけられた。
「ありがとうございました」と店員から紙袋を差し出され、受け取とろうと伸ばした私の手を追い越し、西田リュウが紙袋を受け取り席を立った。


「さ、行こう」

「え? あぁ、はい」


 促されるまま、というよりは西田リュウのペースに乗せられ。立ち上がりバッグを肩にかけ後を追うように店を出る。
 店を出ると、焦げ茶色のガードレール上に座るようにして佇んでいる西田リュウの姿が目に留まった。