・LOVER—いつもあなたの腕の中—

　「なんだ、気づいてたの？　で、それが何か問題あるわけ？」


　嘘でしょ⁈　肯定したよ、素直に認めた！


　いとも簡単にしかもサラッと答えられてしまったことで、驚きを隠せず座っていた椅子からひっくり返りそうになる。そんな私の背中を即座に支えてくれたのは、西田リュウの大きな手だった。


「この椅子、背もたれないよ？　お姉さんって、結構ドジ系な人？」


　クスッと笑った笑顔は、先月のファション誌に掲載されていたワンショットと同じ。柔らかくて、優し気な微笑みだった。
　そんな表情をこんなに至近距離で拝むことになるとは、誰が予想できただろう。

　添えられた手から逃げるように離れ、動揺を隠したい一心で前に向き直す。大きく深呼吸して、一旦落ち着こう。

　右隣に座っている男性は、俳優の「西田リュウ」だ。舞台俳優上がりで、あまり知名度はなかったけれど、サスペンスドラマに脇役として数回出演したことをきっかけに注目され始めたらしく。最近では連続ドラマに出演したり、紙面の表紙を飾るようになった人だ。

　カウンター上に放置されているヒビの入った携帯電話を見つめながら、取り敢えず西田リュウに関する情報を頭の中で思い出し整理しようと試みる。