確かにマネージャーとしては完璧な人だから「好き」だけど「恋愛感情なんて、皆無だ」と笑い飛ばされた。

 分かっている。西田さんが嘘をついていないということは。
 でも、まだモヤモヤが晴れないでいるのは私が西田さんを本当に好きだと思っているからだ。


「言ったよね? 俺が好きなのは優羽だって」

「あの時は、多分って……」

「うん、確かに多分って言った。けど優羽のことを会社に送り届けてから今何してるかなーとか、ずっと優羽のことを考えていたし。優羽から連絡を貰った時は、凄く嬉しくて舞い上がった」

「でも西田さんは俳優だし。周りには綺麗な女優さんとかが沢山……」


 言いかけた私の頬に突然西田さんの唇が触れた。
 それは、最初に出逢った時と同じ感触で。時が止まったような気がした。

 ゆっくりと離れた唇を目で追うと西田さんと目が合い、私の右肩に添えられた西田さんの左手が背中へと移動していく。ドキドキしているくせに西田さんから目が離せなくて。


「頬にキスとか、なんだか出逢った時と同じだね。って、あれは事故みたいなものだったけど」


「覚えているの? なかった事にされてるものだと思ってたのに」と疑うような口調の私に西田さんは即答した。


「忘れるわけないよ」