ドキッとした。



 言えるわけがない。

 君に、片想いしてるなんてこと。




 まだ学生の檜山くん。わたしより年下の檜山くん。

なにより、わたしの教え子で。生徒の……檜山くん。




 君の真っ直ぐな瞳に見つめられる度に、ドキドキしているのに。なんでもない顔をして、なんでもないふりをして。

 必死で動揺する心を隠してるなんて、言えないよ。




「なんで黙んの?」


「黙ってなんか……」


「俺、雪乃先生のこと。めちゃくちゃ好きなんだけど」


「……あ、ありがと。嬉しいよ。けどね、そういう台詞で大人をからかわないの!」




 突然の告白にドキッとしないわけがない。

それが、例え教師であるわたしをからかっているのだとしても。




「あーっ、もぉぉっ! 俺が今言ったこと。ちゃんと聞いてた?」


「聞いてたよ。だから、ありがとうって答えたでしょ? 嬉しいって」




 檜山くんは納得がいかない様子で、後頭部の髪をワシャワシャと掻き。わたしに背を向けて、大きく息を吐いた。