「父さんは?」

「お兄が起きる前に会社に行ったよ。今日はちょっと早く出ないといけない日だったみたい」

そう話しながら「今日の献立何にしようかな」と考える妹は、中学生には見えないほど大人っぽい。まるでもう一人母親が増えたような気分になる。

律の母親は看護師をしているため、夜勤があったり、残業があったりと忙しい人だ。そのため、妹が食事を作ったり積極的に家事をしている。ほとんど毎日家にまっすぐ帰り、家事をしてくれるのだ。

それに比べ、律は学校が終わると友達とカラオケに行ったり、ハンバーガーを食べに行ったり、遊んでばかりだ。そのため、尚更律が子どもっぽく見える。本人は全く気にしていないが。

「そういえば、お兄宛てに手紙?が届いてたよ」

「俺に手紙?」

これ、と妹が律の目の前に差し出したのは真っ黒な封筒だ。ミステリー映画などで犯人が送ってくる予告状が入っていそうな封筒にドキドキしつつ、律は封を開ける。中からは封筒と同じく真っ黒な便箋が出てきた。そこに書かれている文字は、まるで血のように赤いインクで書かれている。