初恋グラフィティ


翌朝。


複雑な思いを抱えていた私は、ユキちゃんの顔を直視することができなかった。




「何か今朝も元気ないじゃん」




運転中のユキちゃんがきのうと同じようなことを言った。




「えっ…?」


「今日もため息ばっか」


「そ…、そうかな…?」


「うん。何かあった?」


「べっ…、別に…」




きのう私が見たり聞いたりしたことは、ユキちゃんには絶対言えないよ。



何か話題を変えなきゃ…。




「あっ、ねえ…、それよりユキちゃんの引っ越しって、もうそろそろじゃない…?」


「ああ、この日曜日だよ」


「えっ…、日曜日って言ったらすぐじゃない…!」


「そうだな」


「へー…」




自分から聞き出したくせに、その答えに思わず泣きそうになる。




すると赤信号でユキちゃんが言った。




「じゃあさ、土曜日にでもハムスターのこといろいろ教えてよ」


「え…?」


「ほら、きのう言ってたじゃん…?俺にハムスターの赤ちゃんくれるって…」


「…ああ」




そういえばそうだ。