初恋グラフィティ


“結婚式を延期しようと思ってた…。”




そんなことを聞かされ、一瞬心に光が差したような気がしたけど、


結局ぬか喜びさせられただけだとわかると、改めて目の前が真っ暗になった。






立ち上がる気力もなくそのままうなだれていると、


恭平さんがそうそうと言いながら戻って来て、私の肩をたたいた。




「何なら志保ちゃん、結婚式が終わるまでしばらく実家に戻ってていいよ」


「え…?」




突然の話に、思わず彼の顔を見つめてしまった。




「どうして…?」




そうたずねると、




「いや、別に深い意味はないんだけどさ…、結婚したらまた忙しくなるし、その前に実家でゆっくりしてくればって思ったんだけど…、嫌なら別にいいけどね」




恭平さんはそう言って笑った。






…私の誕生日は結婚式の3日前だ。



てっきり一緒に祝ってくれるものと思っていたので、恭平さんからそんな言葉を聞けるなんて、何だか信じられなかった。




それでも私は彼の言葉に甘え、




「そっか…。そういうことならちょっと帰らせてもらうね…」




結婚式が終わるまでの間、しばらく実家に帰らせてもらうことにした。