「そんな…、どうして…?」
「だって、よく考えたら3月だとまだ母さんの四十九日が終わってないんだよね…」
「…ああ」
そっか…。
家族が死ぬと、法事とかそういうのをいろいろしなきゃいけないんだ…。
「なんかまだバタバタしそうだし、結婚式は四十九日が終わった後に延期した方がいいかなって思い始めてたんだけど…、延期するのやっぱやめるわ」
「え…?」
「志保ちゃんが嫁に来ることは母さんも楽しみにしてたわけだし、母さん死んで間もないけど、こういうことなら喪中も何も関係ないよな…?」
「……」
結婚式が来週に迫っているのは自分でもわかっていたことだけど、
こう改めて確認させられると、私は黙ってうつむくしかなかった。
「よし、じゃあ決まりね…。明日そういうふうに会場に連絡しとくから」
そう言って恭平さんはタバコの火を消した。
そして灰皿を手にして立ち上がると、「俺、先風呂入るから」と言いながら奥に入って行った。

