初恋グラフィティ


「ちょっとわかんないんだ…」


「わかんない…?」




恭平さんが顔をしかめた。




「うん…、受付に預けられてたみたいなんだけど、これくれた人、自分の名前を言わなかったんだって…」


「ホントに…?」


「うん…」




すると恭平さんの目つきが急に変わった。




「嘘つくなよ」


「え…?」


「そっちの花束くれたのは幸男だろ…?」


「えっ…」




…驚いた。




恭平さんがどうして知っているのか不思議に思ったけど、


私がそれを聞く前に彼はため息をついて言った。




「俺さ…、ホントは今日の演奏会、仕事休んでこっそり見に行ってたんだよ…」



え…?




「それで帰りに見ちゃったんだ…。幸男が君に花束を渡すところをさ」




うそ…。




恭平さんの話に、背筋が凍りそうになった。