打ち上げ終了後。
花束をふたつ抱えて帰宅すると、恭平さんがわざわざ玄関まで出迎えてくれた。
「おかえり。演奏会はどうだった?」
「うん…、お客さんもいっぱい来てくれたし、無事に終わったからほっとしたよ」
「へー、それはよかったね」
「うん…」
そんなことを話しながら一緒に居間まで行くと、
恭平さんは私が手にしていた花束を見ながら言った。
「花束、ふたつももらってきたんだ…?」
「あ…、うん…」
「へー。誰から…?」
「あ…、ひとつは是枝先生からなんだけど、もうひとつは…」
「何…?」
「えっと…」
私はそこで口をつぐんでしまった。
本当のことを言うのがためらわれたからで、私は仕方なく嘘をついた。

