やがて始まった演奏会はお客の入りも上々で、特に大きなミスもなく、無事終演にこぎつけることができた。
ステージの緞帳が下りると、私達はロビーに出て、帰って行くお客さんを出口付近で見送った。
そのときだ…。
私は会場を後にする人の流れの中に、ユキちゃんの姿を見つけた。
あっと思った瞬間、彼も私に気づいたのか、すぐにこっちへ駆けつけてくれた。
「お疲れ様ー。よかったよー」
ユキちゃんが私に笑いかけた。
「ユキちゃん…、ホントに来てくれたんだ…?」
ユキちゃんは照れくさそうに微笑むと、
「当たり前だろ…?前から来るって約束してたし…。はい、これ…」
そう言って、ピンクのチューリップをメインにしたかわいい花束を差し出した。

