「嫌…っ!」
私が顔をそらすと、恭平さんは私の顎をつかんで、それを自分の方に向けた。
「今回のとこは許してやるから、ホントにここに越して来てくれないかな…?」
「えっ…」
「頼むよ…。ね…?」
真っ正面から見た恭平さんの目は赤くはれていて、何だか泣いているようにも見えた。
お母さんをなくした悲しみを引きずっているせいか、
私の気持ちが彼にないことを悟ったせいか、
とにかく、
とにかく、
悲しい目で…。
私は本心とは裏腹に、わかったと言わざるを得なかった。
…そうでもしないと、
2度とここから帰してもらえないような気さえした。

