人魚であるヒロインは、陸に住む王子に近づきたい一心で、
魔女に足をもらう代わりに、自分の声をなくしちゃうんだよね…。
それで人魚は王子に近づくことができて、最後はハッピーエンドで終わるんだけど、
よく考えれば恭平さんの言う“交換条件”だって、それと同じことじゃない…?
今私がちょっと我慢することで
私の知らないユキちゃんのことをいろいろ教えてもらえるんなら、
恭平さんに体を差し出すことで
少しでもユキちゃんに近づけるんなら、
こんなこと、
きっとたいしたことじゃないよね…?
私は自分にそう言い聞かせ、初めて感じるひどい痛みにギュッと目を閉じた。
そして頭の中でユキちゃんの笑顔を思い浮かべて、
この悪夢の時が一刻も早く過ぎてくれることをひたすら祈った。

