「そうですか…」
恭平さんの話が嘘じゃないってことはわかったけど、
彼の苦労話を聞かされて、私の心はまた少し揺らぎ始めた。
CDコンポから流れてくるベートーベンの『悲愴』が、文字どおり私の胸にせつなく響いてくる。
「ねえ、あいつなんかの話より、志保の気持ちはどうなの…?」
ベートーベンに耳を傾けていた私を現実に引き戻すように、みぽりんが口を開いた。
「え…?」
「恭平の希望や彼が置かれてる状況より、あんたがどうしたいかってことの方が大事なんじゃない…?」
みぽりんが真剣なまなざしを見せた。
「それは、そうかもしれませんが…」
ああいう話を聞いてしまうと、やっぱり彼に同情してしまう。
自分の気持ちより、恭平さんのことを優先しなきゃいけないというか…。
…けど、そんなことみぽりんに言ったら、絶対怒られるにきまってる。

