初恋グラフィティ


「そっか…。それはまた大変なことになっちゃったわね…」




そう言うみぽりんに、キーコもうんうんうなずいた。




「あの…、恭平さんのお母さんがガンだって話は本当なんですか…?」




みぽりんにたずねると、彼女は険しい顔をした。




「そうね…。恭平のお母さん、数年前に発症してもう何年も治療を繰り返してるんだけど、近年いろんなとこに転移しちゃって、かなり大変みたいね…」


「そうなんですか…」


「あいつんち、お父さんも早くに亡くなってるでしょ…?ホント気の毒よね…」


「えっ…、恭平さん、お父さんいないんですか…?」




それも初めて聞く話だった。




「そうよ…。あいつに聞いてない…?」


「いえ…」


「そう…」




みぽりんはため息をついた。




「恭平はひとりっ子でね…、お父さんが亡くなってからは、お母さんとふたりきりで頑張ってきたみたい…」


「そうなんですか…」


「うん…。あいつ、お母さんに孫の顔を見せてあげるのが夢だとか言っててさ…、私も向こうの希望で早くに結婚したんだけど、結婚して1年くらい経った頃かな…、私は恭平の夢を叶えてあげることができないってわかって、さっさと彼から身を引いたのよ」




そう言うとみぽりんは、キーコにも恭平さんとの過去を簡単に説明した。