初恋グラフィティ


「あ…、悪い…」




ユキちゃんは壊れたガラスを集め、それを丁寧に拾い出した。




そして落ちていた写真を手に取ると、しばらく無言でそれを眺めていた。




「ユキちゃん…?どうかしたの…?」




いきなり黙ってしまった彼にそうたずねると、ユキちゃんは泣きそうな声で言った。




「志保…、確かに恭平はアホなヤツだけど、これで結構いいとこもあるんだ…」


「え…?」


「すごい家族思いだし、志保も子どもも、きっと幸せにしてもらえるよ…」


「ユキちゃん…?」




彼の言葉にわけがわからずにいると、ユキちゃんは更に理解し難いことを言った。




「お前…、恭平と一緒になれよ…」


「え…?」




ユキちゃんは持っていた写真を私に渡すと、再びコートをつかんで玄関へと去った。