でも、誰も座ってなかった。

『あれ?ここだよね?』
周りをキョロキョロしてみたが、それらしい男の人がいない。
 かなり焦っていた。

「こんばんは。」
後ろから聞こえてきて、振り返った。
スラっとした、塩顔の同じ歳ぐらいの男性だった。今時のファッションだった。

「これを落とされた方ですか?」
スマホを見せながら言った。
「そうです。」

すごくホッとした。
「ありがとうございます。」
受け取ろうとすると、スルッとかわされた。

「え?」
少し驚いた。