記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される

「ねぇ、紫苑さん。」
「ん?」
私の言葉に彼は手をとめて私の方を見てくれる。

「どうした?」
「私が事故に遭う前の話を聞きたくて。」
「・・・」
彼は一瞬困ったような表情をしてから、箸を置いた。

「確かに今日は体調もよさそうだし、桐乃がずっと話を聞きたがってるのはわかってるんだ。でも・・・」
「大丈夫。無理はしない。もしも頭が痛くなったら、やめるから。聞きたいの。知りたいの。」
私は立ち上がり、棚の上に飾ってあるウェディング写真を手にする。

その写真の中では幸せそうに私と紫苑が笑っている。
顔を合わせて、これ以上ないくらい笑ってる。

「この子が生まれる前に、ちゃんと思いだしたいの。」