「この子はいい子だな。きっとママを元気づけようとしてくれてるんだな。」
そう言って笑う紫苑の幸せそうな顔に、私はなぜか涙が流れた。

「大丈夫だよ。桐乃。すぐに思い出せなくても大丈夫。そばにいる。俺も、この子も。」
紫苑が私を抱きしめてくれた。

不安はぬぐえないけれど、この温かい気持ちは愛だとわかる。

こんなにも過去の私が大きく温かな愛を感じたことがないということも。




私は自分のお腹に手をあてて、紫苑の胸に顔をうずめて泣いた。

早く思いだしたい。
だって、こんなにも記憶がなくても幸せと感じる瞬間。
もしも記憶があったら・・・と思わずにいられない。