記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される

急いで入浴を済ませると、扉の前でいつものように紫苑が待っていた。
「髪、まだ濡れてる。」
急ぎすぎて乾いていなかった髪にすぐに気づいた彼は、私を洗面台の前の椅子に座らせると、ドライヤーで髪を乾かし始める。

つわりで動けなかったときに、こうして髪を乾かしてくれていたことは知っている。

優しくなれた手つきで髪を乾かす紫苑の表情には疲れを一切感じさせない。

「眠らない生活には慣れてるんだ。むしろ、短時間でかなり深く眠れる習慣がついてるから、心配しないで。それより先に桐乃を休ませないとって気持ちの方が大きいんだ。」
「私はよく眠ってるから。大丈夫。」
「だめ。」
ぴしゃりという彼の顔に、頷くしかない私。
鏡越しの彼はすぐに表情を戻し、髪が乾くと私の肩のマッサージまでしてくれた。

「少しでも良く眠れるように、血流よくしておかないとな。」