「桐乃がもう一度ニューヨークにしてくれた時、絶対に幸せにしたいって思った。すごいやつれててさ。はじめは心から笑ってくれなかったんだ。ご両親を一気に失って、就職も内定をもらってたところが経営不振で内定取り消しになっててさ。すべてに絶望したような顔をしてた。」
そういえば私は就職先も決まっていた。
なのに、就職を蹴ってまで私は紫苑のもとへ来たのかと思っていた。

携帯電話のメモリーを見終えた私に、彼は私の知らなかった話を、包み隠さずに話をしてくれるようになった。

きっと彼も不安だったのだろう。
私がちゃんと乗り越えられるか。
でも、私が過去を知ろうとする姿を隣でみていた彼は、私が大丈夫だと確信してくれたらしい。

「こんなにも自分以外の誰かの痛みに、自分の心が痛むのは初めてだった。仕事柄、心も体も弱くなっている人も、傷ついてる人もたくさん見てるのに。なぜか桐乃が辛そうにしてると俺の心まで苦しくてつらくなるんだ。でも、そんな桐乃が徐々に笑顔を取り戻してくれた。それがうれしくてうれしくて仕方なかったんだ。」