「涼也!」



背後から聞こえてきた声に思わず頬が緩んだ。


振り返った先に見えたのは、長い茶髪を揺らして駆け寄って来る柚李。生まれつき色素の薄い髪色は、同じく茶色の瞳と合わさって明るい雰囲気を纏わせている。



「おはよう、柚李」



笑顔で声をかけると、柚李も溌剌とした笑みでおはようと返してくる。登校前のこの瞬間が、俺はとても好きだった。


家が近い為に小学校の時から登下校を共にしていた俺たちは、中学生になった今でも変わらず一緒に学校へ行っていた。


隣を歩く柚李は今日も明るくて、家族の話や友達の話を楽しそうに語ってくる。昨日の晩御飯は何だったとか、今朝の出来事だとか。些細な話でも、柚李と語り合うとどれもが面白くて、楽しくて。


だからこそ、学校に着くまでの時間はいつも短く感じる。気付けば、教室が目前まで迫っていた。



「昼休みにそっち行くから!」


「うん、また後で」


一組の教室に着いて、振り返った柚李が手を振りながら言う。それに頷いて、俺も自分の教室に向かった。


去年は同じクラスだったけれど、二年に上がるタイミングでクラスが離れてしまったことを思い出し溜め息を吐く。小学校では六年間同じクラスだったから、こうして離れたことがお互い衝撃だった。