雨は止まない。


五分程前に突然降り始めたそれは、今も俺の全身を容赦無く濡らしている。


公園を出て、特に行く先も決めず彷徨い歩いて。結局俺は戻ってきた。さっきまで柚李が居た、その公園に。


入り口で立ち止まって、柚李が居ないことを確認する。誰も居ない物寂しい気配を感じ取って、何故か落胆する自分にため息を吐いた。行動と考えが合っていなくて呆れる。


怒りなのか悲しみなのか、はたまた寂しさなのか。


雨音が煩くて、考えを整理することが出来ない。煩わしい音に苛立っている内に、次第に自分の内心も騒がしくなってきた。



「…何だよ、くそ…」



半ば吐き捨てるように呟いて、俺は公園のベンチに頭を抱えて座り込んだ。座面も何もかも水で湿っているが、今はそんなことどうでもいい。



「…今更、なんで…」



もう容姿すら忘れていた。忘れようとしていた。俺が全て吹っ切ろうとしていたその最中、あいつは許さないとでも言うように突然現れた。俺の胸中なんて考えもせず。



憎らしい、恨めしい…俺を裏切ったあいつが憎くて堪らない。憎くて、大嫌いで…"愛おしい"。



「…っ」



…馬鹿みたいだ。何にせよ、とにかく荒れ狂うこの全てをどうにかしないと、あそこに戻ることは出来ない。今一番安心する…俺の居場所。