悲痛そうな声が胸を突き刺す。今となっては、こういうところが大嫌いだ。あの時の感情が蘇って、望んでも無いのに思い出されて、俺の本心を締め付けるから。
手を伸ばせと言ってくる。過去の俺が。柚李を、誰よりも想っていた時の俺が。
「あの時のこと、謝りたかった…ごめんなさい…。でも私、まだ涼也のことっ…」
「―――…言うな」
氷みたいに貫くような声が自分の喉から絞り出されて、自身のことなのに目を見開いた。苦痛に喘ぐみたいに、滑稽な声だったから少し悔しかった。
「言うなよ、お前にそれを言う権利なんて無いだろ」
「っ…りょう、や…」
ごめんなさい、ごめんなさい…。俺の言葉に繰り返し同じ懺悔を語る柚李に、俺は多少なりとも失望した。
自分で言うなと言ったのに、言わないのかと落胆している。謝るってことは、あの日のことに罪悪感を覚えている証拠だ。
つまり、あれは俺の勘違いなんかじゃ無かった。本当に、柚李の意思で…。
「…もう二度と来んな。こんな紙切れで俺の時間奪って…ほんと迷惑」
ギュッと握り締めていた小さな紙切れをその場に投げ捨てる。こんなものに釣られてのこのこ来た自分に嫌気がさす。来るなと言った割に、呼び出されて接触することを選んだのは俺の方だ。