チラッと見えた千隼の横顔には一筋の涙が流れていた。


ごめんね、千隼。


そんな言葉をグッと飲み込んで唇を噛む。


そんな言葉を掛けてしまったら。


きっといつまでも振り返ってばかりになる。


今日の選択はあってたのかな、なんて。


私も、千隼も。


「ちはる....は、わかりやす過ぎるんだよ。
会長のこと話すとき、絶対嬉そーな顔してるし」


抱きしめられている手が離れて体も離れた。


真っ正面に向かい合う形になる。


「そう、かな....」


「俺はさ、ガキの頃からちはるの優しい笑顔が好きだった。

中学生んとき、ちはるに借りた本を泥に落とした俺に、“これいらない本だったの。ありがと”なんて言ってたけど、ちはるがそのあとその本を買ってたの見てさ。

ホントに優しいよな、ちはるは。

だから俺なんかより会長みたいなヤツとくっつくの正解だと思ってる。

幸せになる、きっとちはるは」