あなたに、キスのその先を。

「おはようございます」

 高橋さんの後ろから、あまり目立たないように気をつけながら都市計画課のフロアに入る。公園緑地係に至るまでにある各係の横を、皆さんにご挨拶(あいさつ)しながら通り抜けていると、そんな私の様子に気がついた修太郎(しゅうたろう)さんが、一瞬あからさまに不機嫌そうなお顔をなさった。

 林さんと森重さんは現場に出る支度(したく)のため、すでに地下にある車両置き場に向かわれたようで、うちの係には修太郎さんしか残っておられなかった。

 ある意味、そういうのも含めていつも通りの朝の様子。

 そう――。修太郎さんの、どこか剣呑(けんのん)とした雰囲気を除けば。

 私は修太郎さんの刺々しい視線に戸惑いながら、「おはようございます」と挨拶をする。もしかするとスルーされてしまうかも?と覚悟していたけれど、「おはようございます」と返事はしてくださった。でも、やはり何かピリピリしていらして。