修太郎(しゅうたろう)さんの言葉の意味が分からなくて、私はベッドの上ですくまってしまう。

　健二(けんじ)さんと修太郎さんがお知り合い？
　私のことを……頼まれて？

「……それは……どういう……」

　意味ですか？と聞きたいのに言葉がうまく続けられなくて、私はベッドに腰掛けたまま小さく身体を震わせた。
　何故だか分からないけれど……。いや、そうじゃない。たぶん、分からないことが多過ぎて怖いんだ、私……。
　思いながら、ギュッと腿(もも)の上で組んだ両手に力を込めて握りしめてみても、震えはおさまらなくて。

「日織(ひおり)さんは健二(かれ)の父親の職業をご存知ですか？」

　ベッドに座り、縮こまってうつむく私の前にしゃがみ込むと、修太郎さんは小刻みに震える私の両手をそっと包み込んでいらした。
　修太郎さんの温かくて大きな手の感触に、私は少しずつ気持ちが落ち着いてくる。

「政界の……方だとうかがっています……」

　私を優しく見つめてくださる修太郎さんに恐る恐る視線を合わせると、そう答える。

　そして、健二さんはそんなお父様を支えるお仕事をなさっておられるのだと、父から聞かされたことがある。
　いずれは健二くんも父君にならって、政界に打って出ることになるだろう、とも。
　だからそんな健二さんの奥さんになる日織には、夫(かれ)を支えられる内助(ないじょ)の功(こう)が求められているのよ、と母から言われて、そんな大役が自分なんかに務まるのかしら？と思ったのだ。