あなたに、キスのその先を。

「ほかの男がどう思うかは分かりませんが……」

 ややしてそう前置きをして、修太郎(しゅうたろう)さんがおっしゃる。

「僕は……こんな風に僕の与える刺激全てに敏感に反応してくださる日織(ひおり)さんが愛しくてなりません。もちろん――他の男には絶対に貴女のそんな姿、見せたくはないですが」

 そこで()を置いて、まるで私の反応を楽しむように耳に触れていらして。

 そんなところ、今まで異性に触れられたことのなかった私は、初めての感覚に、全身が粟立ってしまう。

「しゅ、修太郎(しゅ、たろお)さん、そこ、駄目(らめ)っ、れすっ、くすぐったい……」

 修太郎さんと恋人つなぎをしていない方の右手で、彼の胸元を押し戻すように抵抗を(こころ)みるけれど、体に力が入らなくて全然ダメで。

「日織さん、そう言う時はね、ダメ、じゃなくてもっとして?……って言うんです。二人きりの時くらい、素直な貴女を……僕に見せて……?」

 修太郎さんが敏感になった耳へ、切ない吐息まじりの声を吹き込んでいらした。
 その熱い吐息に、私は思わず首をすくめてしまう。

 そんなこと急に言われても……はい、そうですね……というわけにはいかなくて。

 私は涙目で修太郎さんを見上げる。

 その視線で、私の無理です、という気持ちが伝わったのか、私の視線を受け止めた修太郎さんが、ふっと表情を緩めて小さく息を()かれた。