日織(ひおり)さん……」

 腕ひとつ分の距離で、修太郎(しゅうたろう)さんが切なげに私の名前をお呼びになる。

 私は彼の熱をはらんだ視線に、ただただ心をかき乱されて、小さく息を飲み込んだ。

 私の上に(おお)いかぶさるようにして、こちらを見下ろしていらっしゃる修太郎さんだけれど、両膝(りょうひざ)自重(じじゅう)は支えておられるみたいで、絡められた両手には(ほとん)ど彼の重みはかかっていない。

 それでも私に覆いかぶさる形で四つん這いになっておられる修太郎さんの手足に閉じ込められた私は、身動《みじろ》ぎするのも躊躇《ためら》われて、その状況にドキドキする。

 そんな体勢で見つめ合っていたら、ややして彼の顔が近づいてきて……

(キス、されちゃうのです……)

 そう思った私はギュッと目を閉じた。

 予想よりはるかに柔らかく私に口付けを落としていらした修太郎さんに、ほんの少しだけ身体の力を緩める。
 さっき私が噛み締めた下唇を柔らかく(いたわ)るように、修太郎さんの唇がそこばかりに何度も触れていらして――。