あなたに、キスのその先を。

 何も言わずに私を抱き上げてくださった。

塚田(ちゅかだ)しゃっ?」

 突然のことに思わず彼のお名前を呼ぶと、「お忘れですか? 修太郎(しゅうたろう)です」とたしなめられた。

 彼はそのまま私を寝室に運ぶと、そっとベッドの上に降ろす。

「僕が突然背中を向けたことで、貴女を不安にさせてしまったんだとしたら……申し訳ありませんでした」

 そこまで言うと、塚田さんは私に深々と頭をお下げになった。
 それに驚いた私が、慌てて「そんな……っ」と手を伸ばすと、愛しそうにその手を取ってご自身の頬にあてがってから、手の甲にそっと口付けをくださる。

 塚田さんの温かい手の温もりに、私は心の中から、ざわざわが少しずつ溶かされていくのを感じた。