あなたに、キスのその先を。

 私の言葉を黙って聞いていらした塚田(つかだ)さんが、瞬間、どこか安心したようにほぅっと溜息を()かれた。そうして「なんだ、そんなことでしたか」とつぶやいて小さく笑う。

「しょんな、ころ?」

 私にとっては大問題なのに、と思いながら聞き返すと、

「ええ。僕はまた、僕を大好きだと言ってくださったことを後悔しておられるのかと、心配しました」

 クスクスと笑いながら、楽しそうにそう仰る。

 私は、塚田さんのその言葉に瞳を見開いた。

(あれは……夢の中の出来事じゃ……なかった、の?)

 塚田さんの楽しそうな表情を見て、彼が私の告白を喜んでくださっていることが分かった。それを素直に嬉しいと感じれば感じるほど、それと同じぐらい……いやそれ以上に……。健二(けんじ)さんに対する罪悪感がふくらんで。

「あ、あにょっ、わ、(わらし)には……っ」

 思わず背後を振り向いてそこまで言って、私は塚田(つかだ)さんの笑顔に、ずる賢くも思わず言葉を飲み込んでしまう。

(私は……人として取り返しのつかない事をしようとしているのですっ)