あなたに、キスのその先を。

 修太郎(しゅうたろう)さんがリビングの扉を閉められた音に、私はハッとします。

 つい今し方修太郎さんに吹き込まれた声が、頭の中で脳を侵食するように何度も何度も再生され続けている気がして、真っ赤になって耳を押さえました。

 もちろん、そんなの気のせいなのです。

 バスルームから、微かに修太郎さんが使っていらっしゃる水音まで聞こえてくるような気がして、私はソワソワと落ち着きません。

「あ、し、支度(したく)っ」

 それでもふとそう思い至った私は、手にしたままだった小物類や脱いだ衣服を、急いで鞄にしまいに向かいます。
 鞄を開けて中にそれらを仕舞い込んでから、気がつくとボーッと止まってしまっていて。
 ハッとして頭をぶんぶん振りました。

 ダメです、ダメですっ。しっかりしなくてはっ。

 私は修太郎さんがすれ違いざまに仰った言葉を思い出して、ハッとして時計を見ました。

 しゅ、修太郎さんがお風呂に向かわれて何分経ちましたかっ!?

 彼が上がっていらっしゃるまでに私、寝室でお待ちしていなくてはいけないのですっ。

 私はすっくと立ち上がると、いそいそと寝室に向かいました。

 寝室の扉を開けて中に入って……あまりに真っ暗だったので怖くなって……。

 シーリングライトを灯そうとして、それだと明るくなり過ぎてしまいますっ!と思い直して、ベッド横の間接照明をつけます。