あなたに、キスのその先を。

「ぶはっ、日織(ひおり)さん、すみません。さっきのあれ、あきらかに言い過ぎでしたし、俺の思い込みだった、みたい……ですっ」

 必死に笑いを抑えていらっしゃる様子で、健二(けんじ)さんが沈黙を破ってくださいました。

「……な、内容は少しアレでしたが……ちゃっ、ちゃんと意見っ、言えるみたいで、ホッとしました。俺、てっきり昔みたいに何も言えないままに、かと思って心配してたんです、けどっ……」

 そこでとうとう我慢できなくなられたようで、肩を震わせて笑い始めてしまわれて。

「ちょっ、健二、そんなに……笑っ、たら……」

 健二さんをたしなめていらっしゃる佳穂(かほ)さんも、懸命に笑いを堪えておられるのがわかります。

 私は今更のように恥ずかしくなってきました。

 勘のいいお二人です。なんの、と告げていなくてもさっきのアレがなんの話か、明らかに分かっておられるみたいです。

 うー。穴があったら入りたいですっ。

 私は恥ずかしさに、縮こまって修太郎さんの胸に再度顔を埋め直しました。

 そんな私を、修太郎(しゅうたろう)さんがギュッと抱きしめてくださって、私は少しホッとします。

「――僕だけずっと黙っててすまない。二人の指摘が余りに図星過ぎて言葉が出てこなかったんだ。……その、わざわざ僕らのために苦言を呈してくれてありがとう。けど……いま日織さんが庇ってくださったように、僕は彼女の意思を(ないがし)ろにするつもりは微塵もないから。それだけは、約束する。――それに」