あなたに、キスのその先を。

「そういえば――」

 修太郎(しゅうたろう)さんが、髪をセットなさりながら、洗面所からヒョコッと顔を覗けられて、
「――さっき佳穂(かほ)と少し話しました」

 そうおっしゃいました。

「……あ。お電話、通じたんですねっ」

 そのお声に、リビングへ向かおうとしていた足を止めてそうお返ししたら、「ええ。――あと十分くらいで着くという《《一方的な》》連絡でしたけどね」と返ってきます。

 修太郎さんの不機嫌そうな口ぶりから察するに、彼からのコールが通じたのではなく、また佳穂さんから掛かっていらした雰囲気です。

 それにしても――十分! これは急いでメイクを頑張っても間に合わないかもしれませんっ。

 私がソワソワし始めたのを、ジェスチャーで大丈夫ですよ、と制していらっしゃると、修太郎さんが話を続けてくださいます。