あなたに、キスのその先を。

『その声は……日織(ひおり)ちゃん!? 貴女、まさかもう修太郎(しゅうたろう)と一緒に住んでるのっ!?』

 スマートフォンから女性の声が弾けます。

「か……佳穂(かほ)……さん?」
 聞きお覚えのあるハキハキとしたそのお声に、私は恐る恐る呼びかけました。

『そう、佳穂よ。――ね、日織ちゃん、さっき健二(けんじ)から聞いたんだけど、修太郎と入籍したって本当なのっ?』

「あ、はい、昨日……」

 私がそうお答えすると、電話口から溜め息が聞こえてきて。

『日織ちゃん、入籍(それ)、ちゃんと納得してしたの? 修太郎に流されちゃったんじゃないっ?』

 佳穂さんは怒っていらっしゃるみたいです。何故でしょう?
 私は修太郎さんのお顔を見つめて首を(かし)げました。

『あー、もう、電話じゃやっぱりダメね! 今から修太郎ん家(そっち)行くから! 外出とかしないで待ってて!』

「えっ? あ、オイっ!」

 修太郎さんが慌てて電話に呼びかけられましたが、すでに通話は切れていて、スピーカーからは無情にもツーツーという音が聞こえてきます。