「お風呂に入られた後にメイクなんてしなくてもいいんですよ。日織(ひおり)さんは存在自体が無条件で愛らしいのですから。――そもそも、キミの素顔、僕はとっくの昔に知っていますし……今更なにを恥ずかしがる必要が?」

 貴女がいくつの時から追いかけていると思ってるんですか、と笑みを含んだ吐息を漏らされた修太郎(しゅうたろう)さんが、次の瞬間いきなり顔を隠したままの私の両手首をグッと掴んでいらっしゃいました。

「あっ」

 嫌です、も恥ずかしいです、も言う間も与えていただけず、修太郎さんに両手をソファに縫い付けられてしまいました。

 恥ずかしさに、頬が一瞬で熱を帯びたのが分かって。それなのに、一連のことがあまりに突然で、顔を背けるのも忘れて修太郎さんのお顔を茫然と見上げてしまうしかなかった私に、

「ほら、ね? こんなに可愛らしいのに隠すことないです。他の人に見せる必要はありませんが、僕にはこれからもありのままの日織さんを、ずっと見せていただきたいですね」