あなたに、キスのその先を。

「あ、あのっ……わた、私っ、少し汗をかいてしまってまして……それで、その……やっぱりお風呂をいただきたいな……と思、うのですが……」

 しどろもどろではありますが、ちゃんと言えました。お風呂入りたいです、って。

 それなのに。

 修太郎(しゅうたろう)さんがすぐにお返事をくださらないので、段々不安になってきました。私は彼の表情を窺《うかが》い見るようにして、「……ダメ、ですか?」と付け加えました。

(ダメだと言われることは想定していませんでしたが、もしそうなったら……どうしましょう)

 そんなことを思いながらソワソワと落ち着かない私をしばらく見つめていらした修太郎さんが、フッと相好(そうごう)を崩されました。

「――ごめんなさい。少し驚いてしまって。もちろん構いませんよ。日織さんのお宅のお風呂とは勝手も違うと思いますし、一通り説明をしますのでこちらへどうぞ」

 良かったです。修太郎さん、OKを出してくださいましたっ。

 言うなり私に近付いていらした修太郎さんに肩を抱かれました。途端、いつものシプレ系の香りではなく、石鹸の清々(すがすが)しい、どこかフローラルな香りが漂って来てドキッとしました。

 見た目のギャップもさることながら、香りのギャップも精神的にグッと迫ってくるようです。

 私のそばにいらっしゃるのは修太郎さん……です、よね?

 そんな不安を覚えて、私はチラリと彼のお顔を盗み見ました。