あなたに、キスのその先を。

***

 車に乗り込んですぐ、私は運転席の修太郎(しゅうたろう)さんに恐る恐る尋ねました。

「あ、あの……修太郎さん……。私たち、その……入籍したってこと……ですよね?」

 つい今し方、市役所の守衛室で婚姻届の時間外受付をしていただきました。
 受け付けてくださった守衛さんのお話によると、受理した日が入籍日になるらしいので……私と修太郎さんは……本日付で戸籍(こせき)上は夫婦になったということなんだと思います。
 でも……例えば戸籍謄本(こせきとうほん)を取って確認したわけでも何でもないので、今一実感がわかなくて。

「はい。晴れて夫婦です」

 修太郎さんは始終にこやかで……運転席側にある私の右手に、ギュッと指を絡めて握っていらしてルンルンのご様子です。

 婚姻届には、結婚後、夫と妻どちらの姓を名乗るのかチェックを入れる欄がありました。

 私は(とつ)ぐ身ですので、当然そこは「夫の姓」にチェックがついていたわけで。

「私、……その……、つ……、つ……」

 塚田(つかだ)日織(ひおり)になったのですか?とお伺いしたいのに、何だか照れてしまってその一言が言い出せません――。

 もじもじしながら修太郎さんのお顔を見上げたら、「貴女は今日から塚田日織です」とにっこりされました。

 ひゃーっ。つ……塚田日織っ。何だか照れてしまいますっ。

 私は一人真っ赤になって、新しい名前を噛み締めました。

「――それでね、日織さん。実は結婚を機にひとつご提案なんですが……」