あなたに、キスのその先を。

「婚姻届です。日織(ひおり)さんのご署名などと捺印(なついん)があれば、提出できるようになっています」

 言われて、手にした紙をまじまじと見つめると、証人欄に修太郎(しゅうたろう)さんのお父様である「神崎(かんざき)天馬(てんま)」氏のお名前と、「藤原(ふじわら)日之進(にちのしん)」という、私のお父様の自署が並んでいて――。

「……どうしても()()()()()()()()……実は少し前から根回しさせていただいていました。……勝手にすみません」

 私がフリーズしてしまったのを見て、修太郎さんが頭をさげていらっしゃいました。

 どうしても、今日?
 その言葉が気になって、私は修太郎さんを見つめました。
「あの、今日って……」
 何か大切な日で、もしかしたら私だけそれを忘れてしまっているのでしょうか? だとしたら……まずいです。
 おろおろしながら修太郎さんのお返事を待つ私に、彼が少し申し訳なさそうなお顔をなさいました。

「今日は……僕と日織(ひおり)さんが初めて出会った日なんです。貴女が覚えていらっしゃらないのは当然です、お小さかったので。なので……今日にこだわるのは僕のワガママです。……その、気持ち悪くてすみません……」

 修太郎さんのその言葉を聞いて、私は少しホッとしました。それと同時に、本当に修太郎さんが私のことを大切に想って下さっているのがわかって。

「――凄く凄く嬉しいですっ! 気持ち悪くなんて、ないですっ!」

 そのことに気が付いたら、今日を逃してはいけない、と思いました。

 それなのに――。