あなたに、キスのその先を。

「――(しゅう)太郎(たろう)さん?」

 きょとんとして彼のお顔を見上げたら、真っ赤になられた修太郎さんが、とても言い難そうに「日織(ひおり)さん……その、……む、胸が……」とつぶやいていらして。

「……むね?」
 ぼんやりと修太郎さんのセリフを繰り返した後で、私は彼がおっしゃっている言葉の意味を理解して、

「わわわっ。す、すみませっ――!」

 慌てて彼から離れました。

 私、照れ隠しに修太郎さんに強くしがみ付く余り、気付かないうちに彼の腕に胸を押し当ててしまっていました……。

 あーん。穴があったら入りたいですっ。

 二人で、何とも言えないこそばゆさに赤くなりながら、ぎくしゃくとした足取りで歩く羽目になってしまいました……。

 本当に私、粗忽者(そこつもの)で申し訳ないです……。