あなたに、キスのその先を。

「随分……楽しそうですね」

 すぐ間近から声をかけられて、思わずびくりと身体が跳ねる。

 塚田(つかだ)さん、だった。

 振り返った勢いのまま、危うく塚田さんの胸に飛び込みそうになった私は、寸でのところで急ブレーキをかける。彼が近くにいると気付いただけで、心臓がバクバクして、顔が火照(ほて)るのを感じた。

(わ、私の恋煩(こいわずら)い、すっごくすっごく重症なのですっ)

 私は慌てて塚田さんから一歩距離を取ると、

「すみませんっ。高橋《たかはし》さんが話しやすい方だからついっ。――私、もしかして……こちらに長居(ながい)しすぎてしまいましたか?」

 わざわざ塚田さんが少し離れた公園緑地係から道路整備推進係(こちら)までいらしたのだ。
 私が席になかなか戻らないから、ご迷惑をおかけしてしまったのかも。

 ごめんなさいっと、慌てて頭を下げると「いや、そういうわけではありませんよ」と甘やかすように微笑まれて。