あなたに、キスのその先を。

日織(ひおり)さん、実はこのまま一旦市役所へ戻りたいのですが、よろしいですか?」

 問いかけられた言葉に、お仕事が終わっていらっしゃらないのに無理をしてお迎えにきて下さったのかも?と思った私は「もちろん構いません。――あ、でももしあれでしたら……私、家でお待ちしても……」とお答えしたのですが。

 修太郎(しゅうたろう)さんはゆるゆると首をお振りになられて、「日織さんと一緒がいいのです」とおっしゃった。
 私は不思議に感じながらも、もしかしたらお手伝いが必要なのかも?と思い至って、「はい、修太郎さんが望まれるなら喜んで」とにっこり微笑む。
 お話ししている間に、さっきまで照れていたことなんて、すっかり吹き飛んでしまいました。

***

 市役所に着くと、修太郎さんはいつも停めていらっしゃる月極(つきぎめ)の駐車スペースではなく、利用者用の駐車場に車をお入れになられました。

 終業時刻が過ぎているからかな?と推測しながら、私は修太郎さんに手を引かれて車から降りました。地面に立つと同時に、修太郎さんが当然のように腕を出していらしたので、私は戸惑いながらも彼の腕に掴まったのですが――。

 厚底シューズのお陰で、いつもよりほんの少し修太郎さんのお顔が近くて、何だか照れくさくなりました。

(職場なのに……こんなイチャイチャして大丈夫でしょうか?)

 嬉しく思いながらも、ついつい気になってしまいます。

 まだ都市計画課の皆さんで、残っていらっしゃる方もおられるかもしれませんしっ。 

 修太郎さんに至っては、きっと私よりお知り合いが多いので、他の課にも知人がいらっしゃると思います。