あなたに、キスのその先を。

「私なんか、なんて言い方は感心しません。確かに藤原(ふじわら)さんはホワッとしたところがある不思議な女性ですが、そんな風に自分を卑下(ひげ)しなきゃいけないような醜女(しこめ)ではありませんし、むしろ可愛いほうだと思います。性格だってそんなに悪くない。もっと自信を持っていいと思いますよ?」

 サラリとすごい誉め殺しをされた気がして、私は少し照れてしまう。

「も、持ち上げ、過ぎです……」

 ゴニョゴニョとそう返しながら、それでも塚田(つかだ)さんに「可愛い」と言われた時みたくドキドキしない事に内心ホッとした。

「まぁ、《《俺の好みからは》》かけ離れてますけどね」

 俺はしっかり者の姉さんタイプの女性が好きなので、と付け加えてから悪戯っぽくニヤリと笑うと、高橋さんが仕切り直すように声のトーンを変えた。

「とにかく! ずっと気になってたんで、兄貴面(あにきづら)して偉そうにアドバイスしてみました。好きな人がいるならいるで、ちゃんと自分の気持ちに向き合わないと、きっと後悔しますよ? 分かりましたか?」

 言って、ウインクをしてみせる高橋(たかはし)さんに、私はお兄様がいらしたらこんな感じなのかしら?と胸の奥がじんとした。
 そうして、はっきりとは言われなかったけれど、私の塚田さんへの想いは高橋さんにもダダ漏れなのかな?とも思ってしまった。

 私は高橋さんの言葉にしっかりうなずくと、丁寧にお礼を言って、(きびす)を返す。

 と――。