その感触に恐る恐る顔を上げると、ほんの少し距離を詰めていらした修太郎さんが、
「また明日、市役所でお会いしましょう。おやすみなさい」
 とおっしゃってから、私にだけ聞こえるぐらいの低音声音(ボイス)で「……()()日織さん」と付け加えていらした。

 私はそのお声に耳まで真っ赤になって硬直してしまう。

「日織?」

 お母様に声をかけられて、耳を押さえてビクッと一瞬身体を震わせてから、私は玄関を出て行かれた修太郎さんの背中に声をかける。

「お、おやすみなさいっ。――……修太郎さん」

 彼のお名前を呼ぶ前に、心の中で小さく「私の」と修太郎さんを真似てみてから、その言葉の響きに心の中がほんわりと熱くなって照れてしまう。

 修太郎さんは、まるで声にならなかった私の声が届いたみたいに立ち止まってこちらを振り返られると、すごくすごく幸せそうな笑顔を私に向けて、会釈していらっしゃいました。

 修太郎さん、大好きですっ!