あなたに、キスのその先を。

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 修太郎(しゅうたろう)さんがおっしゃった通り、そこのショッピングモールには宝石を扱うお店が五つも入っていて、どのお店もキラキラしていて素敵でした。

 特にそのうちの一店舗が、私好みの可愛らしいデザイン――小ぶりでガーリーな……例えばハートやリボンやお花などのモチーフ――が多くて、今、修太郎さんと二人でくだんのお店に立ち止まっています。

 修太郎さんから「好きなのを選んでください」と言われたものの、彼が求めていらっしゃるのがどのようなタイプのリングか分からず、私は先ほどからファッションリングばかりを眺めて目を輝かせています。そんな私に、修太郎さんが「気に入ったの、ありましたか?」と聞いていらして。

「あ、いえ、その」

 どれもこれも素敵に見えてこれと言ったのが決められていたわけではなかった私は、その言葉ににわかにソワソワしてしまう。

日織(ひおり)さんはどんなデザインがお好きなんですか?」

 今後の参考のために教えてください、と低音ボイスで耳元に(ささや)かれた私は、思わずそちら側の耳を押さえてあわあわする。一瞬にして耳がぶわりと熱くなったのを感じた。

「あ、あのっ、私、そそっかしいので……。その……あまり大振りなデザインだと引っ掛けてしまいそうで……それで」

 ピンクゴールドの四葉のクローバーと、オープンハートが、ホワイトゴールドの台座にあしらわれた華奢(きゃしゃ)なリングを指差したら、「あー、これは確かに日織さんらしいデザインですね」と微笑まれた。

 でもこれ、形は可愛いんですけどお値段が可愛くないのです……。