あなたに、キスのその先を。

「すみません。日織(ひおり)さんの体調が優れないようですので、二人で少し風に当たってきます。――あの、藤原(ふじわら)さん、お嬢さんをお借りしても?」

 一応に私の両親へ許可を取ろうと声をかけられた修太郎(しゅうたろう)さんに、「日織(ひおり)はもう、キミの許婚(いいなずけ)なのだから、好きにするといいよ」とお父様の声が聞こえて。

 私はその言葉の嬉しさに、身体がブワッと熱くなるのを感じた。

(私が修太郎さんの……許婚(いいなずけ)

 感情がますます(たかぶ)って、涙がどんどん(あふ)れてきてしまって。(うつむ)いたまま小さく鼻をすすったら、
「立てますか?」
 いつの間にか私のすぐ背後に立っていらした修太郎さんに、耳元でそう問いかけられた。

 不意をつかれて、彼の声にゾクリと身体を震わせてギュッと目をつぶったら、その隙に頭からふわりと修太郎さんの香りに包まれた。

「え?」

 気がつくと、修太郎さんがお脱ぎになられたジャケットが、私を頭からすっぽりと覆っていて。

「失礼……」

 その予想外の展開に、わわわっ、と照れまくっている間に、今度は身体が宙に浮かんで、抱き上げられたことを知る。