「……日織(ひおり)さんが僕のことをそんな風に思ってくださっているなんて、正直驚きました」

 そこで言葉を区切って私をギュッと抱きしめると、耳元に続きの言葉をくださる。

「僕は、貴女に愛されていると自惚(うぬぼ)れてもよい、のでしょうか……? まだ信じられない気持ちでいっぱいですが、同時に……本当に……ものすごい果報者だとも」

 痛いぐらいにギュッと抱きしめられて、私はその痛みでさえも、すごく幸せな気持ちに変換してしまう。

 恐る恐る修太郎(しゅうたろう)さんの背中に腕を回すと、私も彼を力いっぱいギュッと抱きしめ返した。

「思い切り自惚(うぬぼ)れてくださいっ! 私も……修太郎さんに愛していただけて、とても幸せです。どんなに嬉しいか、修太郎さんにお見せできないのがもどかしくて(たま)らないくらいですっ」

 私のその言葉に、修太郎さんが息を飲まれた気配がした。それから、感極まったように私を抱く腕に力を込めると、「日織っ」と小さく呟いていらして。私は初めて彼に呼び捨てされて、胸がキュン、となりました。

 大切な人に好きだと素直に伝えられること。
 その人から同じように気持ちを返していただけること。
 それって何て得がたい幸福なんだろう、と思いました。
 私はこのかけがえのない(もの)を守るためなら、何だってできるとさえ思ってしまって。

「修太郎さんとのこと、お父様やお母様、それから修太郎さんのご両親にもちゃんと報告……したいです」

 もしも反対されたとしても、絶対に説得してみせる。
 二人一緒ならできる、と思った。

「それで……そういうのを全てクリアしたら……()()()()()を……」

 私がそこまで告げて修太郎さんを見つめると、彼は私の唇に優しくキスを落としてくださった。
 それから唇を離して私をじっと見つめていらしてから、
「その時こそ……あなたに、キスのその先を――」

 合言葉を告げるように、そう、おっしゃった。