私は初めて自分から距離を詰めて、修太郎(しゅうたろう)さんの唇にキスをしました。

 キス、といっても……唇が触れ合うだけの子供っぽいキスです。

 一度は私に背をお向けになられた修太郎さんが、今回は私を避けていらっしゃいませんでした。たったそれだけのことで、凄く凄く幸せな気持ちになれました。

 ほんの少し修太郎さんに触れ合えるだけでも、私はとても満たされた気持ちになれます。
 でも、修太郎さんは大人の男性です。私が思うよりも、もっと色んなことを私に求めていらっしゃるのかも知れません。
 もしかしたら……私が満足する程度のことではちっとも満たされたりはなさらないのかも?

 もし、そうだとしたならば――。

「あの……修太郎さん。私っ、本当に何も知らないので……おそらく他の同年代の皆さんのように色々なこと、ちっともできていないと思います……。でも……でも……。修太郎さんが教えて下さったら色々頑張れますのでっ。なのでっ。私に何かして欲しいことがあるときは……さっきみたいに背中を向けたりなさらないで……その、き、希望をおっしゃってください。私、修太郎さんのためなら……大抵のことは出来る自信が、ありますっ。私、修太郎さんにさけられることの方が……とても……とても寂しいのでっ、それだけは……どうかしないで頂きたい……の、です……」
 
 一生懸命想いの丈を修太郎(しゅうたろう)さんにぶつけると、彼が息を呑まれたのが分かった。

 修太郎さんは私の瞳をしっかりと見つめていらっしゃると、「ごめんなさい」とおっしゃった。