狭い車の中で手をつなぐ。

 それが、どのぐらい修太郎(しゅうたろう)さんにご負担を掛けてしまうのか、男性の身体の生理現象に(うと)い私にはよく分からないのですが、そのぐらいなら……もしかしたら許されるんじゃないのかな?とか思ってしまって。

 私は、修太郎さんに恐る恐る手を差し出しました。

 修太郎さんはほんの少し考える素振りをなさったあと、そんな私の手をそっと握ってくださいました。

 しばらく二人で手をつないだまま身動(みじろ)ぎもできなくて……。静かな室内に私と修太郎さんの息遣いだけがやけに大きく感じられます。

「あ、あのっ、修太郎さん」

「あの、日織(ひおり)さん」

 その沈黙に耐え切れなくなった私たちは、ほとんど同時にお互いの名前を呼び合っていました。
 そのことが何だかおかしくて……二人で顔を見合わせてクスクス笑いあったら、自然と顔が近くなって……。