このまま流されてしまいそうで、流されてしまってもいいとさえ思ってしまった自分が怖くて……先ほど泣いたことだけが原因ではない潤んだ瞳で修太郎(しゅうたろう)さんを見上げたら、

「もう、ご自分のことを(おとし)めるような発言はなさいませんか?」

 修太郎さんに真剣なお声で問いかけられた。
 私は彼のその言葉に何度も何度もうなずく。

 修太郎さんはそんな私の様子にふっと瞳を細められると、「約束ですよ?」と念押しなさって身体を離された。

 私は彼と急接近した拍子に乱れてしまった着衣を慌てて整える。

 ポニーテールが少し崩れていしまったのはどうしよう。結び直したほうがいいのかな。でもでも……。
 まだ心臓がバクバクして、修太郎さんの方をまともに見ることが出来なくて、私はギュッと両手を握り込む。

 頭の中はグルグル状態で、それを悟られたくなくて視線を伏せ目がちに窓の方へ流した。

 と、背後から修太郎さんが優しく、ほんの少し乱れてしまった頭を撫でていらして。それだけで心臓が跳ね上がってしまった私は、ビクッと身体を強張らせてしまって、修太郎さんを苦笑させてしまう。

「安心してください。いくら僕が我慢のできない男でも、大切な貴女との初めてをこんなところでいただくつもりはありません」

 そこまで言って、「ですが――」と切なげにため息を落とされた。

「ですが、さすがにこういつもお預けは正直しんどいです。日織(ひおり)さん、申し訳ないのですが、少し離れても宜しいですか?」

 切なげな吐息とともにそうおっしゃった修太郎さんが、私に背を向けていらした時、私は彼が何に苦しんでおられるのか分からなくて、きょとんとしてしまった。